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三の夢【夢買長者】越後の昔話集

三の夢(越後の昔話)mukasi

三の夢【夢買長者】

―高橋ハナ昔話集―より | おもしろい新潟県の昔話

 
三の夢

 あったてんがの。あるどこに大きな呉服屋があってそ、その呉服屋は、おおぜいの番頭を使っていたと。その中へ、三とよう男がでっち奉公していたと。ここの主人は夢が大好きな人で、元日に
「二日の初夢を見たら聞かせてくれ」
とみんなにようたと。三日になって、主人が
「おまえ方、二日の初夢見たもんがあったら聞かせてくれ」
とようろも、三だけが
「おら、夢見た」
とようだけで、他のもんは、だれも夢見なかったと。主人が
「三、おまえ、どっげな夢みたか、教えてくれ」
とようろも、三は、見た夢をえーて(いっこう)いわんかったと。いくら主人が
「ようてみれ」
とようてもいわん。
「それじゃ、おれがその夢を買うすけ、ようてみれや。
いくらやろうか。二十両やろうか」
とようてもいわん。
「じゃあ、五十両だすすけ、ようてみれや」
とようてもいわん。主人は、ごうにやして、
「よし、おめえ、そんげんようこときかねば、俵の中へ入れて、ぶちゃって(すてて)しまう」
とようても、三は、いわんかつたと。主人は、ごうにやして、番頭に
「三を俵に詰めて、浜ばたへ置いて来い」
といいつけたと。ほうして、三は、俵に詰められて、浜ばたへぶちゃられたが、そこへ、鳥がきて
「三、三」
とよぶてんがね。
「おい、三、んな(お前)、夢見たてが、おれにきかせてくれや。そうせば、俵の縄をほどいてやるが」
とようて、俵の縄をほどいてくれたと。ほうして、三に
「おい、三、夢聞かせてくれれば、宝物くっる(くれる)」
「なに、宝物だと、どっげ(どんな)の宝物だ」
とようたれば、鳥が筆みたいな小さな棒を出して、
「これだ、これだ。これで、『江戸へいげ』とよえば、ツーッと行ってしまう。『大阪へ行け』とよえば、ツーッといってしまう。なんでも、自分の好きなようになる」
とようたてが。ほうしたれば、三は自分の見た夢を聞かせねうちに、
「その宝物、おれにちょっくら、貸してみれや」
とようて、鳥から取ってしもうた。ほうして、
「大阪へとんでいけ」
とようて、大阪へとんでいって、
「大阪の鴻之池(こうのいけ)のお嬢さんのへそのめぐら、ぐじぐじせい。ぐじぐじせい」
とようたてが。大阪の鴻之池のお嬢さんがからだじゅうに、カイカイ(かいせん)が出来で具合が悪くなって、へそのめぐらがぐじぐじするてが。ほうして、あの医者、この医者にかけるども、どこへかかっても、えーて(いったい)なおらんと。三は、毎日、
「大阪の鴻之池のお嬢さんのへそのめぐら、ぐじぐじせい。ぐじぐじせい」
とようていたてんが。お嬢さんは、だんだんあんばいが悪くなったてが。
「これは、医者にかかっても、なおらんが、どうしたら、よかろうか」
と心配しるろも、ますます悪くなるばっかだったと。ほうしるんだんが、こんだ、高札(こうさつ)を立てたと。そこには、「お嬢さんの病気を治したものには、なんでも好きなもんやるし、娘の婿(むご)にしる」
と書いであったてが。ほうしたら、三がきったねえ格好(かっこう)して、
「高札について参りました」
とようて、鴻之池の家へ行ったてが。三があんまりきったね格好だすけ、
「こんげのがんに、見てもらってもどうしょうもねえ」
と思ったろも、
「まあ、みてもらえば、いいこてや」
とようことになって、三は、何も見ること知らねえろも、お嬢さんの手の脈を見たり、いいかげんにあれ見たり、これ見たりしていたと。三は
「水のみに行く」
とようて、自分のからだのあかを丸めて
「これを飲めば治る」
とようてやった。三は、家にきて、その筆みたいな宝物に
「大阪の鴻之池のお嬢さんのへそのめぐら、ちょいとようなれ」
とようて、ちょいと左へ回したと。ほうしると、お嬢さんのあんばいがちぃっとよくなったと。三は、次の日も、鴻之池へ行って、お嬢さんのからだを見るまねをしては、家に帰って、その宝物の筆のような棒に
「お嬢さんのあんべい(ぐあい)、さっとよくなれ」
とようたと。次の日もまたそうしているうちに、日もだんだんたって、お嬢さんのあんばいは、だんだん良くなって、しまいには、くるっとよくなってしもうたと。ほうして、三は、いい着物着て、いい男になって、お嬢さんと一緒に花見に行ったてが。それは、三が、正月二日に見た初夢で、それが正夢になったてが。いきがさけた。


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