本文へスキップ

葬式の使い | 長岡市の民話

葬式の使い(越後の昔話)katari

葬式の使い

『越後山襞の語りと方言』より | 長岡市の民話

 
葬式の使い

 はあ、とんとむかしがあったてや。村のうしろのほうにでっこい山があってその山から化け物が出てきて人をいじめるってねえ。村の人が集まってだれか化け物を見あらかして(1)くれるもんはいないかと相談ができた。ある家のつぁつぁ(2)が見あらかしてくることにきまったと。「かかや、あの葬礼場に化け物がでるてが。おれ、そこへいって、みあらかしてくる」そうして、鉈を研いで持って、葬礼場に行ったてんがの。
 行ったれば、でっこい木があるんだんが、その木の上に上がって、枝のところで見ていたと。そうしたれば、木の根っこで青い火がトボトボともえちゃ、プツンと消えてしまうと。「いやあ、こんげん青い火が燃えたり消えたり、燃えたり消えたりしているが、これが化け物でなかろうか」と思うてみていると、その火がパタンときえると、でっこい目の青道心(3)がのこっと出たてんがねえ。それからこんだトチントチンと木の上に登ってきたてんがねえ。ほうしてつぁつぁの足を押さえるてが、つぁつぁは、鉈で手をスパーンと切ったてや。その青道心は、ギャッ、ギャッギャッと叫んで木からすべって落った。
 そうして木の上でつぁつぁがいると、しばらくして「つぁつぁもう。かかが死んだすけ、はや来いもう」と子どもの声がするてや。つぁつぁは、「はあて、ありゃ、おれん子だが、おれがここへ来るとき、達者でいたがほんとに死んだろか」と思うて聞いてれば、「つぁつぁ、もうかかが死んだすげ、早や来いもう」って言ったと。「はあて、おらかか、俺がここ来る時なんでもなかったが、ほんに死んだろか」と思っているうちに、「チリリン カモモン、ドンガラリン」っておとがこんだ聞こえてくるてが。「はて、葬式がでるがだろうか」と思うているうちに、「ヨッサ、ヨッサン、ヨッサン、ヨッサン」と村ん人が棺かつねてくる音がするって。「おらかかは本当に死んだがだか」と思っていたれば、またそのうちに、「チリリン カモモンドンガラリン」って、鉦の音に、メハチ(4)の声に、ショウガ(5)の音に、みんな声がして、「ヨッサン、ヨッサン、ヨッサン、ヨッサン」と、その棺桶つぁつぁのいた木の根っこの葬礼場に持ってきて置いていったって。
 さあ、つぁつぁは、木の上いて、下に降りようかとも思ったども、やっぱり木の上にいると。そうしているうちに東のほうがだんだん明るなってきたって。そうして夜が明けてきたんだんが。こんだ明るなってから木の下へ降りたてんがねえ。そうしたりゃ、見たりゃ、むじなのごうぎのが手切られて、スパーンと両手切られてて、その根っこで死んでいたてんがねえ。「やあや、やっぱりこのむじながおれをだますがで、わざかげたな」と思って。それからこだそのむじなを木にくくりつけて、かつねて、そうして家に帰ったてんがねえ。家に帰ったりゃ、かかは、生きていたてんがねえ。「やあや、このむじなが俺だますてがで、術かけただんがこのむじなが術だったんだな」。と思って。それから、そんで、その村に化物が出ねようになったと。いちごさけ、ぶいーちょ。
【出典】『山古志村史』川上忠一さん語りより
【注】1.見あらかしてくる(見届けてくる) 2.つぁつぁ(父親) 3.青道心(僧になったばかりで仏のこころに疎い人。) 4.メハチ、妙八(仏具の一つ。楽器のシンバルに似ている。) 5.ショウガ(不明。仏具か。)
【解説】
 ムジナが人を化かして、葬式の真似する話。化け物退治に分類される昔話。ムジナが人間を恐怖させながら、ついには勇気ある人間に敗北する。旧越路町の高橋ハナさんの昔話集には、この話が代表されて「ムジナととっつぁ」と名づけられている。
 ムジナは、獣へんに各という漢字があるが、アナグマの異称と広辞苑に書かれてある。狸と混同することもあるという。前に勤めていた小千谷高校生物標本室にムジナの剥製があったが、あれはアナグマだったのだろうか。足の爪が鋭かった。
 昔話に登場するムジナは葬式と火事で人を化かすのが得意だったといわれている。
 小千谷の伝説に真人ムジナが有名である。平成十八年、民話の会の仲間と真人ムジナのふるさと小千谷市若栃を訪問した、ムジナの穴を見学し、地元の人と交流した。天保十二年、小千谷陣屋に願い出てムジナ退治がなされた。その穴は、佐渡へ通じていて、逃げたムジナは佐渡へにげ、佐渡の団三郎ムジナになったといわれている。若栃小学校の子どもたちが、昭和三十八年、ムジナの穴を調査し、地図ができていた。若栃ではムジナが縁で、佐渡市羽茂の人たちと交流しているという。日本昔話辞典には「人間をいったん恐怖させながら、ついには愚かしく敗北するという妖怪譚、化け物話の背景には、自然を畏怖してやまなかった人間の原始のこころが隠されている。自然とは、ときに厳しく、人間に迫るものであったが、所詮人間をやさしく抱きかかえるものであった」と福田晃氏は述べている。


 
お求め

<本の事項>
越後山襞の語りと方言
著者名 高橋 実/著
出版社 雑草出版
出版地 長岡
出版年 2007年
定 価 2200円+税
ISBN 4-903854-00-7

越後山襞の語りと方言

・ご購入を希望の方は高橋実(0258-95-2340)までお問い合わせください。

 

■「越後の昔話 名人選」CD(全11枚)の頒布について■

越後の昔話名人選CD
 本書に収録された昔話の多くを、新潟県の名人級の語り部により収録されたCDを頒布しております。
 優れた語り手による昔話は聞いて楽しいばかりでなく、民俗学的にも貴重な民話資料となっております。活字でしか接することが難しくなってきた昔話を、語り伝えられた土地の言葉でたっぷりとご堪能ください。―昔話CD販売サイトのご案内―
『越後の昔話名人選CD』の内容・お申込みは、こちら。
 ※昔話CD販売サイトが別ウィンドウで開きます。