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序 | 越後山襞の語りと方言

mukasi

『越後山襞の語りと方言』序

蛯原 由起夫 

 
『越後山襞の語りと方言』序

 高橋実先生が「越後山襞の語りと方言」を上梓されることになった。昔から会津は「越しの風」という西風が新潟からの文化を運んできた。「越しからのもらひ雪降る会津かな」「降る吹く啼く会津の雪の萬語もつ」高橋静葩氏の俳句だが、会津はかつて雪や風からも越後の文化の恩恵を受けてきた。それは瞽女の語りであったり、ことばとしての方言であった。津川は元会津藩領だったこともあり、塩の道・海産物の交易の道であり、六十里越・八十里越を通って戊辰戦争の時、河井継之助が援軍としてやってきた。会津の我々はこの歴史的事実を決して忘れていない。長岡という言葉をとおして「越しの文化」を感ずるのである。
 高橋氏は鈴木牧之研究家でもあり、小説「雪残る村」で芥川賞候補にもなった方である。更に瞽女唄ネットワークの事務局長でもあり、「へんなか」の編集長として、地域の文化を世に出してこられた。「雪と人こそが私のテーマ」を掲げられた氏は、昔話の発掘と語りの検証をとおして獅子奮迅の活動をされている。かつて水沢謙一氏のようなすぐれた採集研究家を出しているにもかかわらず、後継者が出ていない。かつてはどこでも貧しかった。しかしそこには囲炉裏を囲む、団欒や方言のぬくもり豊かさがあった。「母のふところに置き忘れた、ふるさとのぬくもりを今呼び戻すべきだ。」
 いまなぜ民話の語りが必要なのか。高橋氏はながおかの文の林創刊号で「こういう時勢だからこそ民話の語りが試されている、民話の語りはコミュニケーション力の育成である。親子同士の殺人が、日常茶飯事のように行われいている社会。家族のコミュニケーションが出来ない人が増えてきて、自分の意思をことばで表現できなくなっている」と語られている。またこうも語られている。「故水沢謙一氏のようなすぐれた研究家、採集家を生み出していながら、その後継者が育っていない新潟県は、民話の語りでは後進県である。各県で結成されている語りグループも組織化されていない。」と嘆いておられるが、先日「長岡の語りの会」にお伺いした時、栃尾のおばあちゃんや新潟の語り部など、一流の風格さえ持っておられる方々が多く語っておられた。伝統語り部が数多く潜在的に、存在されている。
 このたびの著書がきっかけになれば、高橋先生の思惑も実証できよう。会津より満腔の敬意をもって祝意を捧げたい。
 平成十九年七月二十八日

(蛯原由起夫・本名村野井幸雄/
福島県現代詩人会名誉会員・日本ペンクラブ会員・
日本現代詩人会員・福島県方言と語りの会顧問・会津美里町在住)
 
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<本の事項>
越後山襞の語りと方言
著者名 高橋 実/著
出版社 雑草出版
出版地 長岡
出版年 2007年
定 価 2200円+税
ISBN 4-903854-00-7

越後山襞の語りと方言
 

・ご購入を希望の方は高橋実(0258-95-2340)までお問い合わせください。