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語り継こう越後の昔話を【語り継こう越後の昔話を活動】

語り継こう越後の昔話を【語り継こう越後の昔話を活動】mukasi

語り継こう越後の昔話を(『越後山襞の語りと方言』より)

高橋 実 

 
語り継こう越後の昔話を

 民俗学者の関敬吾は日本の民話採集について、次のようにいう。
 新潟県は地域的には昔話に恵まれた国ではあるが最近の同地方における水沢謙一氏の精力的採集は高く評価さるべき業績である。これまで佐々木喜善その他の採集によって、岩手県がもっとも多く昔話が採集された地域であったが、新潟県は岩倉一郎などの採集以来、多くの人の努力によって岩手県をはるかにしのぐに至った。しかも日本における昔話の型は六〇〇をこえるが、その半数の三三〇余話がこの一地方に見出される。(『日本民俗学大系』「民話」一九五九年二月第一〇巻)  その水沢謙一先生も平成六年七月、他界された。この輝ける昔話の宝庫越後の昔話を宝の持ち腐れにしてはならない。長岡には下條登美さんを初め、すぐれた語り手が多くいるのである。この願いを受け継ぐべく「語り尽くし越後の昔話」は発足した。昔話は、文字で記録すればそれでよいものでは決してない。生きた言葉で、語り継いでこそ伝わるのである。話者達はその絶妙な語り口で人々を昔話の世界に引きずり込んできた。
 昔話研究の国内の第一人者野村純一氏は昔話の伝承者達が社会的に注目されるようになった理由について次のように書いている。

 昔話を数多く語り得るといった、老人の一見平凡な営みが、広くに取りざたされ、次にその存在が知られることによって、村内でのそれまでの彼らの位置と評価に決定的な価値の転換が生じたからである。思えば、このようにして囲炉裏端の昔話の語り手が、新たな社会性を帯びて村の前面に登壇して来るといった姿は、少なくてもこれまでは、まったく考えられない事態であった。その意味では今日、在地の伝統的な口頭伝承の担い手たちは、彼ら自身が自覚するしないにかかわらず、また好むと好まざるにかかわらず、実はそのありよう自体が、社会的機能を擁している。(「村おこしにつなげ昔話の語り手達」昭和六十二年九月八日 読売新聞)

 その昔話のイベントも今年、平成十一年は、第六回を迎える。この長岡の地に、確実に歴史を刻んでいる思いがする。
 第二回は、翌平成七年九月、長岡市けさじろ荘で開催した。会場いっぱいの入場者で百五十人もの聴衆が詰めかけた。NHKテレビの取材があった。この日の出演者と演目は次のようだった。中里村の二人は、当時公民館長の南雲昭治さんから紹介していただいた人である。南雲昭治先生は、かつての水沢中学校の同僚で、私たち夫婦の仲人をしていただいた先生である。当日南雲先生も二人の話者の運転手役兼「話の相槌役」として参加された。
 中里村の南雲キクノさんは、昭和四年十一月生れ。「なかさとの昔話」著者でもある。この日は「うさぎどんとふっけうどんのとびっくら」、栃尾市の林ヤスさんは「栗山の蛙と広瀬の蛙」「炭焼き長者」を語った。
 同じく中里村の樋口倶吉さんは、大正七年三月生れ。「なかさとの昔話」著者でもある。「卯の木の馬喰」を語る。越路町の高橋ハナさんは「朝日長者」を語った。
 小国町の山崎正治さんは、「薬屋と化け物」「おいよ」を語った。
 長岡市の下條登美さんは、明治三十七年十月生れ。長岡市昔話伝承文化財保持者でもある。「橋の夢」「月見草の嫁」の二話を語った。下條さんは、水沢先生がなくなってから、あまりよそで語らないと言われた。いかにも上品な人柄が印象的だった。
 第三回は平成八年九月二十三日、でき上がったばかりの「アトリウム長岡」を会場に次の六人が出演した。この日は聴衆は八十人だった。
 小国町の山崎正治さんは、「人年貢とるむじな」「かちかち山」を語る。
 中里村の南雲キクノさんは、「殿様とへっこきよめ」を語る。
 越路町の高橋ハナさんは、「鳥を呑んだ爺さ」「ボタとカエル」「むじなととっつあ」を語る。
 見附市の富川蝶子さんは、「もくぞう長者」「煮豆のおかわり」を語る。
 中里村の樋口倶吉さんは、「鉄砲ぶち」「だいろどん」を語る。
 栃尾市の林ヤスさんは、「コウノトリの恩返し」「へっこきよめ」を語る。
 第四回は平成九年九月二十一日、アトリウム長岡で開いた。この日の聴衆は四十五人だった。
同じことをやっているのに、このように聴衆が目まぐるしく変るのは、マスコミの取り上げ方法にもよる。ちょっと予告記事が載ると人が集まってくる。このときの出演者は、次の通り。
中里村の樋口倶吉氏が入院で出演できなくなり、小国町の鈴木百合子さんから急遽出演していただいた。
 見附市の富川蝶子さんは、「和尚と小僧」「笑うという字ができるまで」
 小国町の鈴木百合子さんは、昭和六年二月生れ。絶妙な小国弁で昔話を語る。「のめしキツネ」
 小国町の山崎正治さんは、「おおよつばり」「かにかにこそこそ」「大蛇と花嫁」
 越路町の高橋ハナさん「蛇の恩返し」「しりきりいなり」
第五回は平成十年九月二十六日、話をしたいと希望する人が多く、アトリウム長岡では次の十人の出演となった。
 小国町 永見恒太さんは、明治四十三年生れ。小国の昔話の語り手「カラカサと石とカメ」
 栃尾市 佐藤美波さんは、栃尾市立下塩小学校三年。「ニシンがハチ」「三枚の札」
 越路町 高橋ハナさん「ねこのばけもの」「きのこの 化けもの」
 柏崎市 大掛きみこさんは、昭和二十二年十日町市生れ。柏崎の昔話の語り手で知られる。「おんなの雷様」「天狗のかくれみの」
 小国町 鈴木百合子さん「サル婿」
 中里村 南雲キクノさん「花のあんさと弥三郎婆」
 小国町 山崎正治さん「縁結びの話」
 中里村 樋口倶吉さん「ざとうぼうとこけ」「爺さとねずみ」
 見附市 富川蝶子さん「三の神のまじない」
 六回目を迎えるこの催しは世代交代の波が確実に来ていることを実感する。百話クラスの話者が次第に亡くなったり、出られなくなるかわりに、若い話者があらわれて来る。去年の話者の小学校三年生の語り手。佐藤美波さんの出現はみんなを驚かせた。かつては、いろりの端で少ない人数の子供相手にしていたのが、今は高座に上がって、その聞き手の大部分は大人である。百五十話の語り手高橋ハナさんは昨年全国紙に紹介され、多くの人々の注目を集めることになった。
 こうして昔話の語りは社会的にも大きな地位を占めつつある。いま日本人の話が上滑りして空回りしている今こそ、この語りを大切にしていかなければならないのではないか。そんな使命感に燃えて、これからますます語りを発展させてゆくつもりである。

 
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<本の事項>
越後山襞の語りと方言
著者名 高橋 実/著
出版社 雑草出版
出版地 長岡
出版年 2007年
定 価 2200円+税
ISBN 4-903854-00-7

越後山襞の語りと方言
 

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