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今なぜ民話の語り活動か【今なぜ民話の語り活動か活動】

今なぜ民話の語り活動か【今なぜ民話の語り活動か活動】mukasi

今なぜ民話の語り活動か(『越後山襞の語りと方言』より)

高橋 実 

 
今なぜ民話の語り活動か

 平成十八年八月、福島県郡山市で開かれた「みちのく伝承民話祭」に行って来た。そこでは東北六県それと新潟県から十五人の語り手が地域の言葉で民話を語った。
 福島県は、民話語り活動の先進県であることが実感された。新幹線の駅の中に「おばあちゃんの民話茶屋」が設けられて、駅を訪れる人に地元の民話を語っているのである。新潟県では全く思いもかけないことである。そして「NPO法人民話と方言の会」の会員が五百名、その発端は二〇〇一年の「ふくしま未来博」だった。このとき「からくり民話茶屋」で八十六日間にわたり、のべ五百三十九人が民話を語り通したのである。その時の情報は私らのところに届かず、出かけて聞いた人はいない。
 あれから五年経って民話語り活動を改めて検証しようとして今回の催しがあった。
 今なぜ民話の語りなのか。こういう時勢だからこそ民話の語りが試されている。民話の語りはコミュニケーション力の育成である。殺人がしかも親子同士の殺人が日常茶飯事のように行われているこういう社会。家族のコミュニケーション、地域のコミュニケーションが決定的に不足していることから起こっている事件である。ふるさとが、日本が壊れてきている。コミュニケーションができない人が増えてきて、自分の意思をことばで表現できなくなっている。人の言葉が聞けず、自分の意思を言葉で表現できないのである。
 かつての地域は、生活は貧しかったが、そこには、豊かな言葉で溢れていた。囲炉裏を囲む家族の団欒、行事に勢力を燃やす地域の若者たち。生活が豊かになるにつれて、その豊かな言葉を失っていった。シンポジウムのパネラー村野井幸雄氏は語る「方言とは母のふところに置き忘れてきたふるさとのぬくもりである」。
 民話の宝庫と呼ばれ、故水沢謙一氏のような優れた研究家・採集家を生み出していながら、その後継者が育っていない新潟県は、民話の語りでは、後進県である。各県で結成されている語りグループの連合体も組織化されていない。新潟県も民話語り後進県の汚名を返上すべく、語り活動の新しい動きに行動を開始しなければならない。

 
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<本の事項>
越後山襞の語りと方言
著者名 高橋 実/著
出版社 雑草出版
出版地 長岡
出版年 2007年
定 価 2200円+税
ISBN 4-903854-00-7

越後山襞の語りと方言
 

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