本文へスキップ

「少年の革命」 | 第二小説集『紙の匂い』

少年の革命works

少年の革命 11

         (十一)

 七四年八月、アナーキストたちが三菱重工を爆破して、多数の死傷者が出た。このニュースをきいたとき、おれは「ブラボーやったぜ」と思った。このニュースを伝えるマスコミは、一斉に、罪のない人たちまで巻きぞえにするこの爆弾犯人の卑劣さを非難した。東アジア反日武装戦線と名のる彼らは、予め電話でこのことを会社へ知らせた。全労働者は逃げるようにと。しかし、会社はこのことを黙殺して、だれにも知らせなかった。それで、だれも逃げようとせず、関係のない人たちまでが死んだ。その責任のすべては、三菱にある。三菱は、日本帝国主義の手先となって、飛行機、戦車や銃を作っている会社だ。自衛隊とアジアへその武器をうりつけて利益をあげている会社だ。大企業が爆破されれば、おれの目指す革命が近くなることはたしかだ。おれも、また戦いを開始するのだ。故郷へもどろうと思った。今まで、おれを差別した善良なる市民を、目覚めさせるのだ。故郷を出るときは、こそこそ隠れるように出たのに、今おれは戦うことを知った。偉くなって、故郷の人たちを見返してやろうとして家を出たおれ、これこそ偉くなくてなんであろう。金持にこそなれなかったが、それ以上に社会のしくみを見破った。故郷へ帰って、同志を集め、すばらしいおれたちの町を作ろう。都会の学生たちのかさかさした闘いではなく、同じ故郷をもつみずみずしい若者たちと力をあわせて、権力と金と偏見とがこねあげたセメントの町をこわし、緑に囲まれ、美しい川のあるおれたちの町をつくろう。貧富の差も、人種の差も、男女の差も、現代社会のあらゆる醜さをさっぱりとぬぐいさった、明るく平和な町。ムーミン谷。そうだ、おれたちのムーミン谷を故郷につくりあげよう。みんなで、故郷へ帰ろうよ、同志たち。おれたちのムーミン谷を作るために。

 
 >  >  >  >  >  >  >  >  > 10 > 11