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「彼岸すぎても」 | 第三小説集『さつきの花』

彼岸すぎてもworks

彼岸すぎても 3

 わたしの集めている天気のことわざに、
  彼岸すぎても七はだれ
というのがあった。そして、この本の解説には、次のようにいう。
 暖かい地方では、「暑さ寒さも彼岸まで」といって、秋の彼岸になればどんなに暑い 日があっても、夏の暑さは終わってしまうし、冬の寒さが続いても、春の彼岸すぎれば 暖かくなるというのだが、きびしい寒さが続く雪国では、そういうわけにはいかない。
「はだれ」は、万葉集にも出てくる古い言葉で、雪が激しく降るようすをいう。雪国では春の彼岸が過ぎても、決して安心は出来ない。そのあと、まだ七回も激しく雪の降る日がある。積もった雪が日に解けて、黒ずんできているところに、思いがけない新雪がふり積もる。これをこの地方では、「若雪」と呼び、動詞で「ワカガエル」とよぶ。古く固くなった雪の上に積もる新雪は、急に生気をとりもどし、わかわかしく見えるのだろうか。「ワカガエル」は「若返る」であろう。そういうふうに、彼岸すぎても、何度か若雪に見舞われながら雪国に春がやってくる。それだけ雪国の春は遅いが、やってくる時はまさに爆発するような春になる。

 
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