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「道徳教育研究指定校」 | 第一小説集『雪残る村』

道徳教育研究指定校works

道徳教育研究指定校 4

「いったい、今ころになって、今までの研究方法がまちがっていたとは、どういうことなのですか。推進委員の人はなにをしているのです」
「だいたい主事のいうことも少しかってすぎるのではないですか、せっかく苦労して作った目標というのに、もう一度はじめから作りなおせだなんて」
 その日の職員会議は、いつになくいらだっていた。研究指定校ということのもつ重圧がこんなところでふき出た感じであった。そして、その不満は、推進委員や、吉村教頭に対する非難ともなった。毎日おそくまでやってきた職員にとっては、むりもないことであった。
「何分にも、私たちの不勉強のために、みなさんに御迷惑をかけることを重々おわびしなければならないと思っています」
 吉村教頭は、さっきから頭をさげ通しである。二十三名の職員の不満を一手にひきうけているような形であった。
「この前の主事さんの話だと、生徒の実態を調べるには、教師の観察や個々の生徒の面接、地域へのアンケート調査などの方法があるということです」
「そんなことはじめからおわりまで全部やっていたら、とても今年いっぱいでも生徒の実態はつかめないでしょう。主事さんのいうことにもむりがあるようですね」
「たしかに、とてもこんなことを全部はやれないと思います。しかし、市の指定校としては、主事さんのいうことを無視するわけにはいかないでしょう。これから生徒の実態を調べるにしても、とてもすべてにわたって調べる時間はないと思います。そこでてっとり早く教師の観察をまとめることによって、生徒の実態を調べたということにしたらどうでしょう」
「それでいいのですか。それをもとにして指導計画ができるころになって、生徒の実態把握不十分だといわれでもしたら、どうするのです」
「その時は、私が事情を説明します。時間の制約がある以上、やむをえないと思います」
 とにかく、吉村教頭の話で、他の職員は一応納得した。しかし、だれの心の中にも、わりきれないものが残っていた。いったい、自分たちはだれのためになにを研究しようというのだろう。
 それからも職員会議は長く続いた。

 
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