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「雪ごもり」 | 第一小説集『雪残る村』

雪ごもりworks

雪ごもり 2

 沢木が花村小中学校に赴任した翌日、学校の前の道を黒々と人の列が通った。はじめ、沢木には、その列がなにを意味するのかわからなかった。人通りの少ないこの道に、この長い列は異様に見えた。
「三郎君とこのとうちゃんが死んだんだ」
「うん、きょうお骨が来るといっていた」
 生徒たちも口々に話しながら、窓ガラスに顔をつけるように見ていた。岐阜県の炭坑に出稼ぎにいっていて、落盤で死亡した三郎の父の骨が村に帰って来たのだ。黒々とした長い列は、その骨を迎える花村部落の葬列であった。家には、小学六年の三郎と四年の男の子それに学校にあがらない五つの女の子の三人の子どもが残された。目の不自由なおばあさんがいるという。まだ四十すぎたばかりの若い母親は、この家族をかかえて、どう生きてゆくというのだろう。長い列に加わっている人たちも、夫を遠くに働きにやっている女たちが多かった。明日は、自分の夫の訃報が入らないとだれがいえよう。のろのろといつまでもその列は続いた。沢木は、村によこたわっている現実をまざまざと見せつけられたような気がして、たちすくんだようにじっと見つづけた。

 
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