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タニウツギ | 悠久録(長岡新聞コラム)

悠久録column

タニウツギ

 田植えの頃になると山道の道路脇の崖などにピンク色の花が一斉に咲く。枝は赤みを帯び、新緑の中で枝もたわわ咲くピンクの花はひときわ映える。タニウツギである。まれにはシロバナウツギ・ハコネウツギと呼ぶ白い花が咲くものもあるという。
 辞典には「スイカズラ科タニウツギ属の落葉小高木で田植えの頃咲くので、田植え花とも呼ばれている」と書かれている。高さは2・3メートルの低木で、中心部が空洞になっているので、漢字は「谷空木」と書かれるようである。北海道や本州の日本海側に生育する。
 小国では方言で「ローッパ」と呼ぶ。「ズクナシ」という方言もあるが、さてどこの地方であったか。いずれも役に立たないという意味がある。タニウツギは一方「火事花」(カジバナ)とも呼ばれ、家の中に持ち込むと火事になるといわれる。
 かつてこの青葉を乾燥させて粉にし、凶作の時の救荒食として食べたとも聞いた。家の中に持ち込むことを忌む習俗は、こうしてこの木を保護したのかも知れない。そういえば「ローッパ飯」という言葉もあった。
 この木の使い道はあまり聞かないが、囲炉裏の中において火箸の代わりに使ったともいわれる。ネットをみると、葬儀の時にお骨拾いの箸にも使った所があるという。
 タニウツギの花で思い出すことがある。3月に高校を卒業して東京に就職した教え子が、新聞少年として働いていた。ところが朝連絡がなく出てこない。行ってみたら、寮の一室で冷たくなっていた。卒業してわずか一か月で急死した教え子の葬儀の時、この花が盛りであった。(ひこぜん)


※「悠久録」は長岡新聞の一面コラムです。

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