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田植え | 悠久録(長岡新聞コラム)

悠久録column

田植え

 田植えの季節になった。今は田植え機の上に人が乗ってたちまち終わってしまう。六条植えなど一度に六列も同時に植えてゆく。
 卯の花の 匂う垣根に ほととぎす 早も来 啼きて 忍び音もらす 夏は来ぬ さみだれの そそぐ山田に 早乙女の裳裾ぬらして 玉苗を植うる 夏は来ぬ
 ご存じ童謡「夏は来ぬ」の唄である。作詞は佐々木信綱、作曲は新潟県出身の小山作之助。文語調で今では意味のとりにくい個所もあって分かりにくい。
 農村にとって田植えは一大イベントだった。苗代に育った苗を小束に藁で丸め、それを籠に入れて田まで運ぶ。それまで水を張っていた田は水を落とし、六角形で2メートルほどの田植え枠を転がして線をつけておく。その線が交差するところに育った苗を2.3本ずつ植えてゆく。田植えに前に「苗ぶち」と言って田の中に苗をばらまく作業があった。これはのちに腰に下げた籠に苗を入れて置き、撒かなくてもよくなった。
 田植えにはどこの家も田にも大人も子供も人があふれにぎやかになる。「結い」と言って手伝いの人も来て、共同作業になる。早乙女とはその手伝いの女衆を指す。田の神に奉仕する役目を担っていたといわれ、お太鼓の帯を締め、たすき掛け、新調の菅笠を被って田にはいる。これが歌の中に「裳裾」という言葉になったのであろう。
 田植えが終わると「早苗饗(さなぶり)」というお祝いがある。「さなぶり」には牡丹餅を作って御馳走する。さなぶりは俳句で夏の季語にもなっている。
 田植えの済んだ田に早苗が風に揺れる光景がなんともいえない。(ひこぜん)


※「悠久録」は長岡新聞の一面コラムです。

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