本文へスキップ

稻虫送り | 悠久録(長岡新聞コラム)

悠久録column

稻虫送り

 虫オクリは日本の伝統行事のひとつ。農作物の害虫を駆逐し、その年の豊作を祈願する目的で行われる。小国ではイナムシオクリと呼ぶ。稲虫送りの字をあてる。7月15日夜、稲の成長が一番盛んなとき、松明に火をつけ行列を組んで青田の畔道を回り歩いた。主役は子ども達だった。
 「ちんかんぼうぼう いなむし送れやー送れやー」と歌いながら歩き続ける。「ちんかん」は鐘の音で、「ぼうぼう」というのは「シシウド」(方言はサイキで、中が空洞になっている)の音。鐘を叩き、シシウドを笛のように吹き鳴らしながら青田の続く川べりの道を、行列を組んで歩く。
 子どもが中心だが大人が手助けし、松明は大人から作ってもらった。筆者も子どものころ父から松明の作り方を教えてもらった。松明は棒の先に藁を巻き付け縄でグルグル巻きしたもので、きつすぎると火が燃えず、緩すぎるとすぐ燃え尽きてしまう。縄の加減が難しい。
 火が消えそうになると棒を振って空気を入れて、燃えやすくする。こうした手法は父が教えてくれた。太鼓やほら貝を吹き鳴らし、にぎやかに回ったところもあったようだ。終わると松明は川へ投げ捨てて帰った。
 この行事は小国でも下小国方面の人たちには経験がない人が多い。上小国方面では稲を食い荒らすウンカ・ズイムシ・イナゴなどを駆除し、大切な稲を守り、その豊作を祈った。農薬が普及するまで全国各地で見られた行事のようだが、現在は火事の危険などから行われなくなった。それでも昭和40年頃まで、続いていた記憶がある。(ひこぜん)


※「悠久録」は長岡新聞の一面コラムです。

 > 稻虫送り >