本文へスキップ

昔話と古いことば | 悠久録(長岡新聞コラム)

悠久録column

昔話と古いことば

 昔話である。「ムカシ、魚屋と篩(ふるい)屋は村の中を商売して歩いた」と。先頭に魚屋が立ち、「サカナ・サカナ」といって歩く。その後を篩屋が「フルイ・フルイ」と歩く。すると「サカナ・フルイ」になるので、どこに行っても商売にならなかった。
 魚屋が「お前と一緒に商いすると魚が売れない」として、2人でけんかになった。そこへ古金屋が通りかかって、いさかいを聞く。「俺にいい考えがある。俺が最後を歩く。心配いらない」というので3人して商売した。「サカナ・サカナ/フルイ・フルイ/フルカネェ・フルカネェ/と声出して歩いた」と。古くから各地に伝わる昔話である。
 語り終わると会場から笑いが出る。このような昔話の語りが、いろいろな施設や学校などからお呼びがかかる。しかし今では、この話も子供たちにはなかなか通じない。篩は粉を選り分ける道具で、曲げ物の底に格子状に銅線などを張ったものを指す。だが、その道具を知らない子供たちが多くなった。
 だいたい篩という字は難しい。大人でもなかなか読めない。古金も鉄や銅製品の使い古したものを指すが、現在の鉄屑買いの商人ではない。鍋や釜の穴を修理したイモジ職(鋳物師)の人を指したもの。
 笊(ざる)や箕(み)などの漢字も読める人が少なくなった。箕は脱穀のとき殼・チリなどを選り分ける道具。竹や藤などを編んで作る。農作業には欠かせなかったが、生活様式が変わるにつれて失われて行った。そして言葉も消えていく。
 昔話はこうした古い言葉を残すという役割も担っている。(ひこぜん)


※「悠久録」は長岡新聞の一面コラムです。

 > 昔話と古いことば >