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特定失踪者 中村三奈子さん | 悠久録(長岡新聞コラム)

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特定失踪者 中村三奈子さん

 冬の日本海は荒れに荒れる。その日本海を渡って北朝鮮のものと思われる木造船の残骸が何隻か新潟の海にたどり着いた。日本海を通して新潟県は北朝鮮と繋がっている。その海は、一部の人には暗い、いやな海だった。
 去年暮れ『新潟日報140年 川を上れ 海を渡れ』(新潟日報事業社)の本が出た。この中の第四章に「拉致」の項目がある。横田めぐみさんや蓮池薫さん夫婦、そして佐渡の曽我ひとみさん親子がこの海を越えて北朝鮮に拉致された。
 長岡の特定失踪者中村三奈子さんも拉致の疑いが濃い。三奈子さんは、平成十年四月六日(月)突然家を出たまま行方知れずとなった。この日はクニさんの勤める小学校の入学式だったので、クニさんは朝七時二十分頃家を出た。その年大学入試に失敗した三奈子さんは予備校に入学することにして、その入学金を納める日だった。「今日は入学金を納めに行く日だよ」「うん」と声を交わしあい出勤した。これが三奈子さんと交わした最後の会話になった。
 五月末、三奈子さんの部屋のゴミ箱の中から小さくちぎったレシートを見つけた。それはパスポートの申請のために写真を撮った時のレシートだった。
 以来20年クニさんは三奈子さんの行方を尋ねて何回も韓国にわたった。何かあるたびに署名運動にも加わった。ただ横田さんや蓮池さんなどと違って拉致の疑いが濃い特定失踪者と言われている。クニさんの気持ちを思い、元気な姿で三奈子さんが現われる日を祈るように待つしかない。(ひこぜん)


※「悠久録」は長岡新聞の一面コラムです。

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