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こんな夜更けにバナナかよ | 悠久録(長岡新聞コラム)

悠久録column

こんな夜更けにバナナかよ

 公開中の「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」(前田哲監督、富貴晴美音楽)を見た。筋ジストロフィーの主人公鹿野靖明を演ずる大泉洋さんとその世話をする美咲を演ずる高畑充希さん。病院を飛び出し、自らボランティアを募って自立生活を送る物語である。そのボランティアにわがまま放題を言っている鹿野の勝手な頼みに初め驚いた。
 それがタイトルになっている「こんな夜更けにバナナかよ」である。真夜中にバナナを買ってくるように頼む。初めは、なんという我儘な主人公だろうと思った。しかし、2時間10分の映画が終る頃映画から受ける感じがまるで変っていた。ボランティアもまた主人公から生き方を教えてもらっていたのだ。
 筆者もまた筋ジストロフィーの高等部の生徒と5年間接した経験を持つ。車椅子のままトイレ介助や体位交換で体を持ち上げることもやった。そして体の筋肉が弱ってきて、若いうちに亡くなってしまう生徒も見てきた。一度入院するとなかなか退院は難しかった。
 その生徒に比べるとこの映画の主人公のなんと元気なのか。退院をためらう医師にさえ抵抗して、気管切開してさえも病院から出ようとする。そのために大勢のボランティアを募るバイタリテイを持った女性として美咲は描かれている。主人公とそのボランティアの積極性に驚かされる。美咲の恋人役で医師の息子久も、その積極性に背中を押されて父の職業を継ぐ決心を固める。
 人はいつも与えられるだけでなく、与えてもいるのだ。与え、与えられて社会は成り立っている。(ひこぜん)


※「悠久録」は長岡新聞の一面コラムです。

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