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春の妖精カタクリ | 悠久録(長岡新聞コラム)

悠久録column

春の妖精カタクリ

 今年も山口邸裏の遊歩道で「春の遊歩道散策植物観察会」がある。雪解けが進むと春の野山に様々な花が咲き誇る。
 カタクリ・マンサク・ショウジョウバカマなど、山でこうした花を見つけるといかにも春の到来を実感される。春の山を最初に彩る花の1つが「カタクリ」だ。一面に咲き誇り、花畑の感じがする。赤紫の花びらを下向きに大きく広げて咲く姿は、多くの登山者から愛されている(花びらの色は白いものも稀にある)。
 名前の通り、片栗粉が取れる植物としても知られ、球根は良質のデンプンを多く含んでいる。カタクリの生態は実にひたむきで、応援したくなるような生き方をしている。ブナ林などの落葉樹林の林床で、冬の間は落ち葉の下で寒さに耐え、まだ樹木が目覚める前の早春に芽を出して葉を出し、花を咲かせる。春が深まり周囲の草木や樹木に葉が覆い茂り、光が差さなくなると、葉を落として再び土の中で眠りにつく。そして体力を温存しながらじっと春を待つ。まさに早春限定の草であり花なのだ。
 万葉集にはたった1首しか登場しない。大伴家持(おおとものやかもち)が詠んだ歌が有名である。「もののふの八十娘子らが汲み乱ふ寺井の上の堅香子の花」。「もののふ」は八十(やそ)の枕詞。八十娘子(大勢の少女たち)が水を汲んでいるような姿で寺井(寺の井戸)の傍らに咲いている堅香子(かたかご)の花。なんて可憐なことだろう。
 案内状には、数日で花が終わってしまうこの草花を「春の妖精」と呼んでいる。今年もぜひ会いに行きたいものだ。(ひこぜん)


※「悠久録」は長岡新聞の一面コラムです。

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