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昔話 春の風 | 悠久録(長岡新聞コラム)

悠久録column

昔話 春の風

 春たけなわとなった。青葉若葉の緑の上を吹き抜けて来る春の風が快い。
 昔話に「春の風」と呼ばれる話がある。あらすじは和尚と小僧にまつわる話である。ちょうど今のような春先、和尚が玄関先で春風に吹かれていて、「こんな気持ち良い風を寒い冬まで保存しておいて、寒くなった時、春の風に打たれてみたいものだ」と思い、甕に入れて蓄える事思いつく。ちょうど後ろに大きな甕があったので、その甕に春の風を吹き入れて蓋をして、口を堅く閉じて縛っておいた。
 その一部始終を小僧が見てしまった。「ほんとに風が吹き込まれているのだろうか」和尚の留守にこっそりその甕の蓋を開けたところ、風はたちまち甕の口から吹き出して四散してしまった。困った小僧はその甕に尻をむけて大きな屁をして、蓋をしておいた。
 やがて夏秋と季節が過ぎて、寒い冬の季節となった。和尚はあの甕に保存していた春の風に打たれたいと思って、小僧に甕を持ってくるよう命じた。小僧は「これは困ったことになった。あのいたずらが和尚に知れたら大変だ」と、びくびくしながらその甕を運んできた。その蓋を開けたら、春の風どころか、屁の匂いが一面立ち込めた。それを嗅いだ和尚が「今年の夏は暑かったから、匂いも腐ってしまったな」と言ったという。そこで小僧は自分の悪事がばれることなくホッと一安心という話になる。
 これらの話は昔話では和尚と小僧の話に分類される。和尚がひとりこっそり食べようとした餅が小僧に見つかってしまうなど弱い者の反逆がこうした話のテーマであろう。(ひこぜん)


※「悠久録」は長岡新聞の一面コラムです。

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