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悪の昔話 | 悠久録(長岡新聞コラム)

悠久録column

悪の昔話

 旦那の家の使用人が嘘を重ねて人を殺してのし上がり、金持ちになってゆくという悪賢い人物が主人公の「俵薬師」という話が先日の長岡民話の会の例会で話題になった。
 嘘ばかりつく下男がいる。山の松の木に鷹の巣があるといって嘘をつく。あまり嘘ばかりつくので、俵に詰められて川へ投げられることになった。その俵を担いできた2人の使用人にまた嘘をついて家に戻らせる。その留守に目を患った婆様がやってくる。そして俵に入ると目が治ると嘘をつく。代りに婆様を俵に入れ、自分では姿を消す。後から来た2人の使用人は騙されたといって、婆様の入った俵を主人公の嘘つき下男と思って川へ捨てる。
 その後、嘘つき下男が家に戻ってくる。川底に竜宮城があって、たくさんごちそうを頂いてきた。竜宮城へ旦那様を案内するため迎えに来たという。旦那も騙されて川に流される。また家に戻って旦那が竜宮城の乙姫様の婿になった、これからは自分がこの家の旦那になると嘘をつく。
 嘘をついて、目を患った婆様を殺し、しかも自分の仕えている家の主人まで殺して、自分が家の主人に成りすますこの話は、青森から奄美大島まで日本中に伝わっているという。
 今日われわれの聞く昔話は人のために命を投げ出して働く主人公が中心になる話が多いのに、こんな悪知恵を働かせて幸福をつかむ話などいったい何を言おうとしているのだろうか。これは嘘をついても、生き延びようとする庶民の知恵、私達にもこうした悪の要素を身につけている事への警鐘ではあるまいか。(ひこぜん)


※「悠久録」は長岡新聞の一面コラムです。

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